もはやPC8801とファミコンによる天下統一が揺るぎないものとなっていた1987年の夏、MSX界に最終兵器SCCを引っ提げて救世主の如く現れたグラディウス2はMSXユーザーに熱狂的に迎えられていた。
その興奮冷めやらぬ中、SCC搭載ソフト第二弾としてコナミが発売したのがこのF1スピリットだった。
流石にコナミMSX開発全盛期ということもあって、ゲーム内容、グラフック、サウンドと文句のつけようがない大傑作だったのだが、特に際立っていたのが尋常ではない疾走感だったように思う。
ご存じ8ドット単位のガタガタスクロールであったが、それを補って余りあるスピードが、レースゲームとしてのキモである疾走感を生み出していた。それを煽りたてるSCCサウンド、また盛り上がること間違いなしの2人対戦モードなど、ゲームとしての楽しさが凝縮されたような作品と言える。
僕は現在でも1年に一度ほどMSXの実機を動作確認のために起動するのだが、その時の一番手は必ずこのF1スピリットにすることにしている。
僅か10秒にも満たないオープニングテーマが流れ、手慣れたマシンセティングを終えると、そこにはMSXが奏でる最高時速381キロの世界が広がっている。
その時、最もMSXが輝いていた時に戻れたような感覚に浸れるのだ。
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