我らが《MSX戦闘ヘリ部隊》は、すこぶる強い。強くてどうにも止められない結果、ヘリゲーム
の地平を完全に掌握している。ヘリゲームで編成された部隊が、ヘリゲームの世界で強いの
は当然なんじゃないんですか?とつい思ってしまいがちだが違うのだ。ヘリゲームのふところ
の広い、荒れた風な、卓抜したセンスが光る世界を一度でもまのあたりにすれば、なるほど
ヘリゲームの勝者はすべてのゲームの勝者であり、ヘリゲーム界こそが、全コンピューター・
ゲームソフトの主戦場にふさわしいのだなあ、ヘリ最高。と感じられるはず。
そうなのだ、そのヘリゲームの頂点にいるのが我々なのだ。そしてヘリゲームを至高とするこ
のゲーム界隈のクオリティが下がったりしないよう、にらみを利かせている。ヘボなゲームに
出会ってしまうと、士気に影響するからな・・・分かりきったことではあるが、件の『ヘリタンク』
は戦車ゲームであって、ヘリゲームとは違う。戦車とヘリは共演することも多いわけだが、あ
のゲーム中において我々はヘリの存在を確認していない。ではなぜ、ヘリ・タンクなのかとい
えば、常に脱出口を確保するためにマップのへりで戦車がせこせこやっているから、ヘリタン
クなのだろう。
それはそうと、ここにある『忍者プリンセス』という意味不明なカートリッジはなんだ。冗談は
いいから本題の戦闘ヘリゲームをこちらへよこしたまえ。なんだって・・・
・・・農村部から城下へ大胆にも単身で乗り込み、反逆者から城を奪還する姫、の話であるら
しい。
もう、ぜひ奪還してください。ヘリの出る幕ではないので撤収を、・・・と思ったが、わりと、これ
が・・・優良なゲームである。軽快な操作性を誇り、攻防がスピーディ、かつ直感的だ。
こちらのアクションに対する敵のリアクション、敵のアクションに対するこちらのリアクション・・、
これらの中にシューティングゲームとアクションゲームの醍醐味が詰まっている感じだ。そう、
まるでヘリゲームが持つアクションの多様性、またそれによる局面の多彩さ、奔放なプレイの
感覚が、この前近代的なフィールドに飛び火したかのようだ。
2種類の手裏剣ショットは、シュンシュン放っているだけでエンジョイできるし、使い分けも楽し
い。上固定ショットを連射しながら後退したりする姿は実に頼もしく、ねじれたTagoo空間をく
ぐりぬけて戦闘ヘリに転生してもらいたいと思うほどである。
しかし、これは忍者のゲームなのだ。隠れて、急襲し、かき消えて、尋常ならぬ動きで翻弄
する。「超」が付いてはいても、どこまでも「人」のアクションの世界だ。レスポンスの質の高さ
と、その並外れた戦闘力によって、どうしてもプレイヤーの操る姫君の快活さに着目してしま
いがちである。であるが、ここでは敵の忍者の姿に注目したい。色とりどり、しかし単色の、
切れ味鋭い動きをみせる忍者諸君のハツラツ度はどうしたことか。
諦念のかけらもない、やる気みなぎる、なんだか嬉しそうなこの忍者諸君が、あの手この手
でおそいかかる姿がほほ笑ましいではないか。ここで見ることのできる忍者諸君のデザイン
と動きには思わず「ビバ・スプライト忍者諸君!」と声援を送りたくなる。
それがなんだかんだでみんなザコというのもいい。
セガマイカードのMSX移植もののなかで、「コントローラー環境」の恩恵を多大に受けている
『忍者プリンセス』。ちょっとばかりユルい時間制限があり、それは完全クリアのための巻物
を探すために使う(きた道を戻ることが可能)ものですが、テキトーに遊ぶ心地よさも捨てがた
く、命中率ボーナスと同じく、そういうのはあまり意識しないでプレイしていいと思います。
くるみ姫のキャラクタにやや減色がみられる(気がする)などの他は、ほとんどそのまんまな
移植度。スプライト欠けもなんのその、堂々とした完成度の、楽しいソフトだと思います。
おすすめ度: ★★★★
スプライトの躍動 : ★★★★
うなるジョイパッド: ★★★★
サウンドの時代劇アクション性: ★★★★
ボスの呼んでない感: ★★★
要修行度: ★★
軒先の風情: ★★★★
抜刀後のファジーライクな寄せムーブメント: ★★★★
忍者には単色二頭身がよく似合う: ★★★★★
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