MSX黎明期の謎多きメーカー「ピクセル」のNEO伝説シリーズの第二作
パソコンゲームの広告詐欺案件ではザインソフトが有名だが、tagooさんのタレこみによると、それ以上に被害が大きかった模様。
実際調べてみるとMSXマガジンに1985年から一年あまりピクセルは広告を打っているが、毎号デザインや広告内容が違っており、過大広告なスペック表示や、誇大妄想的なシリーズ展開を謳っていた。今見てもこの広告はセンスがあると思う。
NEO伝説のバックストーリー自体が
人工知能コンピューターVS人類
サイキック少年
人類滅亡への危機
と、いかにも80年代ぽいものであるが、当時のパソコン少年の心を鷲掴みにしていた(含む私)
キャッチコピーなども秀逸で
「大自然の偉大な力よ、あなたは私の敵なのか味方なのか?試練なら甘んじて受けよう、さもなくばあなたとて容赦はしない。」
という煽り文句に、私はすっかり虜にされてしまった。
前作ゼータ2000がそこそこの佳作だっただけに、期待も大きかった。ちなみにロゴやパッケージも滅茶苦茶カッコいい。 発売日に購入してレッツゲームスタート!そして一時間後にはぶた丸パンツで遊んでいた。
ゲーム内容を一言で言うならば「謎解きと、ステージ変化と、アイテムと、BGMがない初代ハイドライド」ということになる。
広告によると「MSX2に迫る繊細グラフィックで800画面・効果も含めて1000画面」ということだが、変わり映えないマップに、変わり映えのしない敵キャラが延々と続く内容。しかもBGMすらない。
前作ゼータ2000と違い、謎解きやアイテム、複雑なマップなど一切ないので、ただ敵を殺して進んでいくだけ。実は経験値もレベルもないので、戦う必要すらない。
唯一のギミックがモビルスーツ形態へ変身なのだが、だからなんだという感じ。動きが遅くなってストレスがたまるだけだ。(一応モビルスーツ形態でないと通れない場所が一つだけある)
このレビューを書くにあったって30年ぶりにプレイしたが、体力を無限大にする裏技を使ったら、報道ステーションを見ているうちにクリアしてしまった。正味45分ぐらいか。
ただこのサンダーボルトは操作性などはしっかりしていて、雷や地震、洪水や噴火、突風などの演出などもよくできている。特にグラフックのレベルは無機的で地味だったゼータ2000よりかなり進歩して、大自然の驚異をMSX1で表現したことは評価できるだろう。ピクセルが技術力のあるメーカーであったことは間違いない。
ただ今から考えてみると、メガロム以前の32KBの容量では、壮大なストーリーを実現させる大規模なゲームとして完成させるのは無理があったのかもしれない。そういう意味では未完成の色合いが強い印象だ。
結局広告で「全5部作」を銘打ったNEO伝説シリーズは、このサンダーボルトで終焉となってしまった。メガロムやフロッピーが一般化した時期に制作されれば、また違ったゲームになっていたと思うと惜しい気がする。しかしその時代の前に、ピクセルという謎多きメーカーは姿を消してしまった。
ピクセルというメーカーはMSX以外にはソフトをリリースしておらず、ネットでもその後の情報は見つからなかったのだが、MSXマガジンの広告を眺めていてあることに気が付いた。
このサンダーボルト発売直後に、ピクセルは会社を渋谷の道玄坂にある一等地のビルに移転しているのだ。あぶく銭が入って気分が大きくなって「やられちゃったよーん」になったパターンですな、きっと。
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