アスキーのROMPACKものは、フットワークの軽さが魅力です。短い時間にちょっとだけ
プレイしてもよし、今日こそはクリアだ、と意気込んで2分後に電源を切ってもよし、「これ、
なんだっけ?」ととりあえず画面を確認するのもよし(ひどいなあ)。強力な名作も多くあるし、
迷作もけっこうある、MSXになくてはならない存在。カートリッジ外観の素っ気なさもいいん
ですよね。
タイトル画面に「びんぼうは、つらいものだ・・・・・」と表示される『ムーンランディング』、硬派
SLGのNEXA社が放つ、宇宙動物園の青天下のトラブル・シュートの騒乱一部始終絵巻
『キャプテン・コスモ』、俺のMSXちゃんは頭いい『ザ・ブレイン』、《MSX戦闘ヘリ部隊》から
つるし上げをくらいそうな『ヘリタンク』などなど、部屋の片隅からポロッと出てきた永谷園の
「スターウォーズ・エピソード1ふりかけ」の小袋のように、時間を超越した味わいを持った、
輝ける殿堂ですな。いいのかな。
『スクイッシュゼム』を制作したのは、同じくアスキーから『TURMOIL』というソフトも出して
いるシリウス・ソフトウェア。妨害をクリアしながらビルをどんどん上ってゆく、アーケードの
『クレージークライマー』のようなゲームなんですが、操作系統は単純明快、窓も壁もない
ビルの鉄材を伝っていくという感じ。
建設途中か、それとも廃屋ビルなのか? 分かっているのは、各階に1匹ずつ、エイリアン
がいて右往左往しているという点。主人公のアドベンチャー君は、同じ階にいるエイリアンに
触れるとアウトとなるので、よけて通るルートを考えながら進みます。また、踏みつけること
によって一定時間エイリアンを封じ込めることができます。復帰した相手にはもう踏みつけ
攻撃は通用しないので、好機を逃すと苦戦することも。踏みつけの動作は移動操作と組み
合わせて、タイミング次第では「飛び越し」にも応用ができる、自由度の高いアクションで、
軽快な操作性に支えられて感覚的にプレイできるレベルにあると思います。プレイヤーの
アクションに合わせたサウンドが、リズムよく、スリルかつコミカルな感じを演出しています。
最上階などでじっとしていると、やがてアドベンチャー君がモソモソとしはじめますが、地味
ながら動きの芸の細かさも持っています。
しかし、なによりも素晴らしいところは、全体の開放的な感覚、「楽しく遊んでリラックスして
ほしい」とでも言おうとしているかのような、ソフトウェアからプレイヤーへの視線と主張が
感じられることです。エイリアンのバリエーションがその最たる例で、外見を含め、いろんな
ヤツが出てきますが、それぞれが特徴をそなえているけれど「極端な差」はないし、大体に
おいて「あまり邪魔してこない」。ノロいヤツも後半面にちゃんと顔を出したりするし、全体の
テンポが上がっていくにせよ、「プレイヤーをしめつけよう」という意図は最後まで見えない。
単にヌルいだけじゃないかと言われそうですが、ステージの鉄材の配置、落下物、そして
のんきなエイリアンたちが、これだけ奔放に画面上を「支配」していると、魅入られたように
やられることもある(と、いうことにしておいて)。「Squish’em(スクイッシュ・ゼム)」とは、
「やつらを踏みつけろ」って感じだと思うけど、このゲームでは「ふんづけちゃうヨ」な雰囲気
があります。『TURMOIL』もそうですがとにかくカラフル。ステージ背景やスコアの表示枠
までもがゲームの進行にあわせて次々とカラーチェンジしてゆく様は、華やかというか、
ほっこりとします。(舞台がとてもシンプルだからこそ可能なことなのでしょう)
ちょっと「ビバ・イルミネーション祭り」気分です。
とりたてて何がスゴイという事はないけど、ゲームデザインの独特の作法というか心意気
が感じられて、渋いなあ、いいなあ、って思います。
おすすめ度: ★★★
ホーム・コンピューター度: ★★★★
操作性: ★★★★
含蓄のある(?)サウンド: ★★★+0.5
座敷わらし度: ★★★★
シリウスの「はみ出るスコア表示」: ★★
まて、それは1UPじゃないか?: ★★★
銀河共同体度: ★★★★
エイリアンは危険なんだよウワァァァ:(参照:『ステップアップ』)
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