まず最初に謝っておきます。バイファムのファンの方、ごめんなさい・・。
1981年。日本サンライズが、「機動戦士ガンダム」のその次に放映した長編TVアニメーション、「戦闘メカ
ザブングル」は、ある種独特なポジションにいる特別な作品のように思います。
ロボットアニメ充実期の80年代作品の多くがそれぞれ「独特」で「特別」なのはもちろんそうだとは思います
が、「戦闘メカザブングル」の独特さ加減は、ちょっとやそっとの説得や篭城では説明できない複雑さを有し
ていて、しかも共有が難しいイメージ論みたいな世界なので、通常、このアニメの魅力を語るというのは、
「おせっかい」で、けっこう不毛な行為であるといえます。
率直に言って、私にとって「ザブングル」とは、TVアニメーションが持ちうる最良の部分と、TVアニメーション
がおちいりやすい粗雑で放漫な側面が同居していることによって、結果的に、唯一無二の魅力を備えるに
至った「舞台型」の作品、のように思うのですが、そう言う私の頭の中では「ザブングル」はすでに無残にも
こまかく切り刻まれており、再編集、統合され、意図的に再配置されながら適当に散らばり、砂塵とエンジ
ン音に包み込まれた世界として息づいているため、まったく信頼の置けない意見であることは確実です。
オリジナルの編集やタイム感に異を唱えているのではありません。ザブングルのフィルムのタイム感が駄目
ならば、日本のアニメーションは基本的にはおそらく全滅です。「ザブングル」の魅力は話のシチュエーション
やちょっとしたシーンのディテールなどにあるもので、ストーリーの動向やキャラクターのおおまかな動機など
には関係がないもの。「ガンダム」的な堂々としたストーリーテリングとは違う、一話完結に向いた、出たとこ
勝負な「ノリの切り売り」みたいな面が確かにあるのです。そのくせ、世界の大枠・・惑星の現状が成り立っ
ている背景にあるものを、事あるごとにドサクサでボソっとこぼすタイミングなどは歳をとるほどに泣けてくる
秀逸さなのです。
つまりそこにあるもの(作品)を、そのまま享受するのでなく、能動的に楽しむことで最大限の魅力を放つ
作品、「別の完成形を持つ完成品」、それが「戦闘メカザブングル」だと思うのです。
もう面倒くさいでしょう。本当にすみません。
完成形を楽しみながら、みずからも能動的に参加して世界を拡げていく・・・そういうのって、なにかピンと
来ませんか?
そうです、われらがMSXです。ページを開けば、市販ゲームのコーナーとユーザープログラムのコーナーに
同じように熱量があった80年代のホビーパソコン誌上においても、とりわけ敷居が低く、いじり甲斐もあって
人気だったMSX。
そのMSXと「ザブングル」の関わりは、実際のところ、あまり強くはない、というのが実感です。
とにもかくにも、まずはポニーの『戦闘メカザブングル ブルーゲールPART1』が挙げられます。これはツクダ
ホビーのボードゲーム、「BLUE GALE」をベースにしたSLGになっていますが、私は現物を見たことすらあり
ませんし、その存在を知ったのですらかなり後になってからで、長い間MSXは私にとって「ザブングル不毛
の地」だったわけなのです。
しかし、MSXとザブングルという、血を分けたような者同士がそんなことでいいわけがありません。
そんな残念な妄想100%の一介のドヘボ男が、MSXの大海の淵を漂いながら、「こ、これは・・!」と驚き、
感慨に浸ったソフトというのがいくつかあります。
まずは『ティル・ナ・ノーグ 禁断の塔』です。
システムソフト社のこのRPGがシナリオ・ジェネレーターを搭載していて、無数のバリエーションのゲーム・
シナリオをプレイできるゲームだというのは皆さんご存知だと思います。私が考えるザブングルの理想的な
ゲーム化というのは、まさにこのゲームのようなものなのです。
敵と味方のありよう、目的、地理、展開の必然性、そのすべてが流動的であり、ランダムに配置された後に
微調整される、システムソフト社の高度なシナリオ作成アルゴリズムを、ザブングルに適用するというのは、
私にとって本当に自然で、好ましいものなのです。前の週がどれだけ感情的に終わろうと、次の週では何も
なかったように、のんきにスタートするあの情緒のリセット感。たいていのキャラが一度はグループを抜け出
して、互いに刃を交えたことすらもある、乾いたリレーションシップ。エンディングでは敵も見方も死者も関係
なしに全員が走り笑う、舞台演劇のような躍動感覚。
それらに比する、世界の屋台骨の大きさと静けさ。
『ティル・ナ・ノーグ』はそれ自体が優良なファンタジーロールプレイングゲームだと思いますが、時折、私は
そこにザブングルの世界を重ね合わせてみたりしているのです。
『ガンバレ!味覚の国の大戦争』は比較的マイナーなタイトルかと思います。このテープ版のシミュレーショ
ンゲームは、ミリタリーマニアご用達風ボードゲーム感全開な海外産PC-SLGを紹介してきた一連のポニー
のリリースとは異なり、オリジナルのターン制・マシーンバトルゲームになっています。タイトルや、パッケージ
アート、甘党vs辛党みたいな説明書きからして、調味料のビンとかが出てくる合戦物かと思ってしまいがちで
すが、普通にロボットバトル然としています。グラフィックは仮につけたAAっぽいもので、マシンのデザインに
魅力があるという類のソフトではなく、正直パッとしないものです。
ただ、これは明らかに「ザブングル」の影響下にあるタイトルで、甘党と辛党(Sweet and Salty)という設定が、
ザブングルのシリーズ後半エピソードの軸となる「ソルト(SALT)」というレジスタンスの名称からの引用だし、
各面のタイトルが「甘党だって必死」、「キャンディみつけた!」、「コショウ、舞う」などと来たらもう疑いの余地
がないってものです。マシンは基本的に泥臭い野戦仕様で、射撃回数や装甲値が設定された、味覚も何も
関係ないっぽいロボバトルにはウォーカーマシン戦の光景がオーバーラップします。
地形効果も一応きちんとあり、スキーを装着することで機動力を増す機体があったりと、ザブングルファンから
すると、「これはそのまんまじゃな」、と言いたくもなるゲームとなっているのでした。
このソフトを制作した「スペース・ラム」が、ザブングルのパソコンゲーム化を念頭に置き、ついには『ブルーゲ
ールPART1』(開発者不明)でそれを実現させたのだな、と個人的には理解をしています。
この『銀河漂流バイファム』もそうです。同じくバンダイの、どちらかというと不名誉な部分で話題になることも
多い『機動戦士ガンダム』に比べて、ゲームの進行やキャラクタービジュアルの再現性など、かなり頑張って
いる印象のあるタイトルです。
ジェイナス号が宇宙を漂流し、引き込もうとする惑星の重力をフライバイ(スイングバイ)航法でかわしながら、
目的のA星を目指すゲームです。敵メカ・ウグがそんなジェイナス号を拿捕しようと攻撃を仕掛けてきます。
プレイヤーは、「バイファムに搭乗しウグを撃退する」、「ジェイナス号のハッチでバイファムを修理する」そして
「操舵室でジェイナス号の進路をコントロールする」という個別のシチュエーションを、それぞれに画面の切替
えを行いつつリアルタイムにプレイしていく必要があります。画面のスイッチングに関しては『ダムバスター』
や『』のような海外産ソフトにもひけを取らない、必然性とスリリングな感触があると思います。
・・もちろんこれは「バイファム」のゲームでいいんです。それでもいいと思うのですが、私にはどうしても、この
ゲーム内容によりマッチしたアニメーション作品の存在がちらついて仕方がないのです(笑)。
際限なく現れてはワラワラと寄ってくる、敵マシーン。変わりばえのしない風景をどこへ行くとも知れぬキャラ
バンのようにすすむ、船。ロボットの修理ってこんなんでいいんですか?みたいな画面上で、アレでもないコレ
でもないと、しっちゃかめっちゃか(死語)の様相を呈する格納庫内・・・・
うーん。まさしくこれ、ザブングルじゃないですかっ!!
宇宙空間は砂漠に、おじゃま惑星はイノセントのドームに、ウグはギャロップとトラッドとクラブとダッガーに、
ほとんど苦もなくコンバートできるように感じますが、いかがなものでしょうかバンダイさん。
・・・格納庫内で鉄筋を避けつつコクピットに乗り込むという、『機動戦士ガンダム』のあのゲーム性こそが、
むしろザブングル的なのでは?と思われるかもしれませんが、あれは、「ガンダム」だからこそヘンなのであっ
て、それゆえに伝説級たりえているのではないでしょうか。
おすすめ度 : ★★★
ファンクションキーはオフライン : ★★
バンダイとワイヤーフレーム : ★★★★
ブラック・アンド・グリーン : ★★★★
名作の一歩手前度 : ★★★★
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