私が思うMSX最強の、そして最愛のシューティングゲームというものは、もう不動の1本
が、あることにはあるのですが、この『ギャラクシアン』がここ何年かにおいてその地位
を脅かし続けていることも確かなのです。アーケード版は世代的に多少ずれがあり、縁の
なかったタイトルでした。今では色々やっていますが、MSX版、素晴らしいんですよ。
それなりに古い付き合いではあるものの、ちゃんとプレイしてこなかったソフト。今なら
はっきりと言える、全然まともにプレイしてなかった時期が、かなり長かった‥
理由は二つあり、ひとつには色々とタイミングが悪かった点。MSX2で起動できないので
MSXでプレイする必要があるのに、MSXを使用する日には大抵、べつの大きなモチベー
ションがあって手が伸びることがほとんどなかった。で、別の日に「あっそういえば‥」
となる、そんなすれ違いっぷりでした。
そしてもうひとつに、本作が『ギャラガ』の前作にあたるタイトルである、という点。
正直私は『ギャラガ』はあまり好んでプレイはしません。なにかシューティング観の相違
らしきものがあるんでしょう。ボーナスステージなどはアーケードではゲーム中に気を抜
いたまま進行できるパート、というのがリッチで嬉しいわけで、家でやるとパーフェクト
取りましょうやというちょっとした圧力のほうが多めに感じられて‥
敵の動きが完全に予定されていて、座標にとどまってショットをマニュアルで連打するの
が性に合わないというか‥(あくまでも個人の感想です)
まあグラディウスが「基本的には」あまり好きではないとか、ゾルニよりもエクセリオン
が好みだ、とか言っている人間がいかにも言いそうな話なのでしょうか。
で、『ギャラクシアン』はその『ギャラガ』よりも古いんでしょ?という感じで、正当な
評価を与えられる機会もほとんどないまま、どんどん影が薄くなってしまっていたわけ
なんですよ。印象が変わったきっかけですか?おぼえていませんな。(毎度すみません)
MSX版『ギャラクシアン』は、もうキレッキレな感じでゲームの石板みたいなイメージ。
操作性が非常によくて打てばちゃんと響く。どこからアタックしてもいいし、そんな自由
な感覚ゆえに自分でセオリーを構築したくもなる。掘れば掘るほど、あらたな面が見えて
くるような奥深さ、味わい深さがあります。
キャラクターは単色でサイズは小ぶりです。ギャラガと比べると小ささは歴然ですが、
この【サイズ感】はシューティングにとってはゲーム性に直結している部分であり、家庭
用ではあまり選択の幅が与えられていない要素でもあります。
アーケードゲームには「綺麗さ」がありますが「こまやかさ」もあります。アクションや
シューティングの時代に、その「こまやかさ」でアーケードがリードできた理由の筆頭が
「解像度」だと言えるでしょう。それに加えて十分な処理速度と、ゲーム単体に特化した
出力機構があった。そこに制作者の情熱とイマジネーションが投入された、結晶のような
アーケード基板。かたやMSX。
MSX版ギャラクシアンの敵キャラクターはきれいな回転のパターンを持っています。
編隊から外れる際のよっこらしょ的な機動、横方向にシフトしながら自機をつねにマーク
している突撃機の抜け目ない感じ、編隊に復帰する直前にクルッとひと回りする、キャッ
チーな動き、これらを実現するのに回転パターンが有効に活用されています。キャラクタ
が単色なのは元々私の好きなタイプですが、ここではパターンの関係で必然的なものなん
です。オリジナルはカラフルなキャラクターが当時のプレイヤーに大きなインパクトを与
え評価されていた部分でもあるのですが、私は単色のギャラクシアンのキャラにはまた
別の魅力を感じます。昆虫のモチーフは残しつつも、より機械っぽさ、船としての冷たい
素材感があって正直こちらが好みです。(アーケードでは、編隊がひとつの生命体とし
て脈動しているみたいな細かいムーブメントが秀逸ですがMSX版ではカットされ、結果
的に無機的な印象を高めています)
とくに一番上のラインに位置する黄色い大型機の印象が、MSX版とそれ以外ではかなり
異なっていて、MSX版ののっぺりとした存在感は単色スプライトならではのもの、、な
んですよね。。
MSX版ギャラクシアンはプレイを重ねてもなかなか先へは進めないです。10面、2万点
超えのあたりで壁にぶち当たります。単純に私がへたなだけかも知れません。しかしこ
れでもかなり修業は積んだのです。自分なりに、危機察知能力は高まってきています。
突撃機との位置関係をまず意識するべきですが、面が進むとそうも言っていられなくな
ってくるので、横移動のみで敵弾をかいくぐる道をきわめていく必要があります。
(それはすでに2発目と3発目の間が切り返しのねらい目という段階を超えています)
その瞬間その瞬間の判断半分と予測半分、ブレンドするのは集中力。
見た目以上に当たり判定の小さい自機でどんどん限界を打ち破っていきたい欲求に駆ら
れます。
アーケード版や、それに近い印象の移植を見た後だとMSX版の画面はやはり「せまい」
です。でも面白い。移植にあたり、ゲーム性を再現するために再構築されている部分が
光っているのだと、思うんです。
MSX移植シューティングというのは今さら言うまでもなく、怪物達が屹立しているわけ
で、オリジナル作品の天下とは言わせない勢力として今もあるわけですが、そのような
一団の中にいる『ギャラクシアン』は、相当ヤバイ奴だと私は思うんですよ。
グラディウス‥ゼビウス‥、これらより何年も前に存在していたタイトルが、ここまで
「弾と敵を避ける」シューティング的な駆け引きにおいて高いクオリティを有していて、
たんなる先駆として神棚に上げられるのではなく,シューティングのファーストチョイス
として手に取られ、スロットにセットされる、この凄さはどうなんですか。
とても優れた手腕による移植であることには疑いがないにせよ、私としてはそれが
「MSXがここまで頑張った」的な、オーバースペック感のあるピーキーな仕様の対極に
あるような作りから生まれていることに、より深い愛情と愛着を抱いてしまうのでした。
おすすめ度 : ★★★★
横殴りショットの恐怖 : ★★★★
ギャラクシップの印象の上り幅 : ★★★★★
余韻も前置きもない そっけなさ: ★★★★★
命中率より要所での一撃必中力 : ★★★★★
残機ください : ★★★★
養成ギブスあるいは底なしの沼 : ★★★
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