MSXが今なお光彩を放っているように、ボードゲームも
地道に愛され続けています。近年では「カタンの開拓者たち」
をはじめとするドイツ産のゲームが脚光を浴び、ちょっとした
ブームを呼びましたが、ドイツのシーン自体は、はやりすたり
と無縁なひとつの文化として根付いていて、ちょっとうらやま
しく思ったりもします。とにかくプレイ人口が多く、世代も幅
広いわけで、ゲームのモチーフもウォーゲーム的な色合いは
すくなく、対戦・対立の要素が不可欠であっても、どこかしら
温かみのあるものが大半で、それぞれがコンパクトな魅力をも
つゲームを数時間のうちにハシゴしてわいわい興じる楽しさは
ボードゲーム独特のもの。
パソコンとして、そういった風景にもっともなじめそうな、
フレンドリーな機械MSXにも、なかなか味のあるソフトウェア
があります。
「エルスリード」はNCSの出世作で、「ラングリッサー」な
どのメサイヤブランド作品の原点ともいえるファンタジー・シ
ミュレーションゲーム。
マップの左下の城から、右上の城まで攻め上がります。
マップ上に投入できる戦力は非常に限られていて、戦略的な
要衝を確保しつつ、戦力の維持に努めます。
対戦相手はコンピュータの指揮下にあるボーゼル軍。手番に
なると、ボーゼルが毎回なにか言ってくるのですが、威圧的で
冷酷ながら、わりとお茶目なところがあっていい。
このゲーム最大の特徴として、プレイの進行感覚や、結果の
白黒の付き加減、優勢=劣勢の波が発生しやすいシステムなど
が、思いがけない展開やドラマを生んで、それが「エルスリー
ド」のマップの隅々に記憶の断片として残ってゆく、物語世界
へのシミュレーション的な没入感があるといえます。これは、
長規模のゲームだとシステム的に不安定であり、逆効果として
のストレスを生んでしまいかねず、またユニットそれぞれに固
有のグラフィックをつけたり、経験・成長の要素を与えたりす
るならば、このゲームで味わえるような駆け引きの面白味や、
一期一会のドラマ性、いちかばちかで立ち向かう時の「もしか
したら」感、こうしたものは無くなるでしょう。プレイ所要時
間は短くはありませんが、中規模でゲーム全体の見渡しが利き、
ひとつの判定に一喜一憂する、これはまさにパソコンで楽しむ
ボードゲームだと言えるのではないでしょうか。
MSXでこういう面白さのあるゲームといえば、ほかにも
多人数で遊べるBPSの「M.U.L.E.」や、パックインビデオから
出ていたKLONのおそるべき怪作「軍人将棋」などがあるわけ
ですが、やっぱりこのへんのソフトはほんとに愉快で楽しい。
ボードゲームの後進国日本にあって、はやくから孤軍奮闘して
いた感のあるこれらのソフトに触れたことで、ゲームの楽しみの
懐の深さを学んでいたようにも思えます。
(蛇足ながら‥)「コンピュータがメッセージを表示している」
かたちの「MULE」が漢字を使ってくれているのはいいこと
ですが、なにはさておいて、「軍人将棋」と「エルスリード」の、
あのひらがな表示。素晴らしいと思います。アスキー用語(?)
でいうところの「コンピュータちゃん」が話しかけて来る時は、
やっぱりひらがな主体でいて欲しい。そう強く願います。
あ、ユーカーンっていうのは、弱小ユニットであるファイターが
あるとき矢面に立たされ、運命のいたずらか、ひたすらその場を
しのぎきったときに「おお、ユーカーン!!(勇敢)」とほめたのが
懐かしいなあ、という話です。あいつは本当よくやったよ。
おすすめ度:★★★★
持ちこたえろ!度:★★★★
操作性:★★★
フッフッフッ‥度:★★★
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