不毛なる徹底レビュー:キャプテンシェフ
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おそらく誰も知らないであろう、「キャプテンシェフ」。これは、1984年に日本コロムビアから発売されたゲームだ。MSXマガジン誌は、1985年1月号で新発売ソフトとして紹介している。しかし私は、私がMSXを買った1カ月後にこのゲームを購入している。つまり、1984年の7月の時点ですでに発売されていたはずである。私はもしや「フライングゲット」してしまったのだろうか。 |
さて肝心のゲーム内容だが、ぱっと見はパックマンタイプのドットイートゲームだ。なにしろ、ステージの形状がパックマンのそれとほぼ同じだからだ。だが、ドットは置かれていない。このゲームの最終目的は、プレイヤー操る「シェフ」が中央のフライパン上に乗せられている「大ブタ」をおいしくこんがりと焼くことである。
画面四隅にある炎をフライパンの下まで運べば、大ブタは断末魔とともに焼き上がり、ステージクリアとなる。しかし、それを阻止すべく四匹の「小ブタ」がシェフをやっつけようとうろついている。そこでシェフの武器として四本のフォークがある。フォークを投げると壁にぶつかるまで飛んでいき、小ブタに当たれば小ブタをしばらくの間気絶させることができる。さらに大ブタを焼きあげるための炎も小ブタ達は苦手とし逃げようとする。うまく炎を小ブタ達に押しつけることができれば動けなくできる。
二面目以降は小ブタたちは「鼻息」を吹いてくる。これに当たるとシェフは死んでしまう。さらに炎をしばらくの間消すほどの力を持っている。しかし、なぜかこの鼻息は右から左にしか吹かないのでそれほど脅威ではない。
さらに三面目以降は「豚鼻の化け物」が出現し、壁をすり抜けてシェフを襲う。これまでに焼きあげた大ブタの怨念だろうか。執念深くシェフを追ってくる。だが動きが遅いので変な袋小路にさえ追い詰められなければ恐るるに足らずである。 |
なにしろ、このゲームは私が手にした最初の市販ゲームである。ちょっとやそっとで思い入れすべてを語ることはできない。やった人にしかわからない「麻薬的」なゲームである。まずその音楽である。音楽というよりは効果音か。ステージが始まると、小ブタ達の歩く「プップップップ………」という音が奏でられる。そして主人公のシェフが歩き出すとさらに「チックチックチック……」と二つの音が響き合う。自分が立ち止まった時に音の調子が変わるのにハッとさせられる。そしてステージクリアした時の大ブタの断末魔……。 ちなみに四つの炎はバラバラにフライパンの下に持っていってもよいのだが、まとめて持っていく とさらに高いボーナスが入る。ボーナス得点が多くなればなるほど長い間、大ブタの断末魔が続く。あぁ、料理って残酷なんだな。幼心に刻まれたものである。 |
ゲーム自身はかなり単調であるため、いかにして高得点をあげるかがポイントとなる。だらだらプレイしたのでは本当の面白さを堪能できない。 先ほども書いたが炎は四つまとめて運んでいった方が高得点となる。これはすべてのステージで実行したい。 それから、これまで小ブタは四匹、と書いてきたが、もし二匹が同じ場所を歩いていれば見かけ上は一匹に見える。その重なった状態の小ブタ達にフォークを突き刺せばより高い得点が入ることになる。もちろん二匹よりは三匹、三匹よりは四匹の方が高得点である。 この二点を考慮すれば、炎で小ブタ達を一箇所に誘導し、まとめて炎に触れさせて気絶させ、そこにフォークを四本お見舞いする方法がもっとも効率良く点数を稼ぐ手立てであることに気づくだろう。
このゲームには、この時代のゲームには珍しく裏技がある。厳密にいうと裏技というより予期せぬバグといった感が強いが。やり方は簡単で、右上の炎をスタート時点のシェフの位置に持ってくるだけである。その内容は歩いている小ブタ達が大増殖し、その何匹かは壁にまり込んでもがき出すのである。このゲームではスプライトを使わずキャラクタで描かれているため、小ブタ達が増殖したように見えるのである。さらにこの裏技には副作用があり、運んできた炎が消えてしまう。そのため永遠にクリアが不可能になる。この裏技は狙ってもいない時に「暴発」してしまう可能性が大きいので注意が必要といえる。 |
このゲームのキャラクタ達だが、同時期の一連のコナミゲームと比較するとさすがに見劣りする。しかし、ナムコットの単色キャラと比べると格段に魅力的である。シェフはまさにシェフであり、ブタ達も紛れもなくブタに見える。これもあえてMSXの特徴であるスプライトを使わずに、キャラクタ文字でのみ構成した作成者側の勝利といえる。キャラクタの動きも中央の大ブタの助けを求めるジェスチャーを筆頭に非常にユニークである。キャラクタではかなり成功しているゲームであるといえるだろう。
誰でも最初にやり込んだゲームというのは印象に残っていると思う。私の場合こんなマイナーなゲームではあったが、私をMSXの虜にさせ、こんなゲームを作ってみようと思わせるのに十分なインパクトを持つ作品であった。このゲームに偶然であれ出会えたことを十数年経った今でも嬉しく思っている。 |
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